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2021.06.13

じゅんさい

季節のおそば じゅんさいぶっかけそば

6月の季節のおそばは超希少滋賀県土山産のじゅんさいを使い、お酢と生姜の入ったそばつゆをかけていただくぶっかけそばです。

じゅんさいのプチプチつるつるとした食感を酸味のあるつゆが奥ゆかしく爽やかにまとめる極めて落ち着きのある日本の初夏を簡潔に表現出来たと自負出来るそばです。

そばを食べた後の蕎麦湯の素晴らしさも格別な究極の一杯です。

実はじゅんさいそばはやってそうでやってなかった理由は二つ。

一つはかなり高コストになるため(へんなじゅんさい使えば安く済むけどそれはできない)提供価格が上がってしまう。

もう一つは、じゅんさいの場合はどうしても酸味が欲しいから、そばつゆとお酢の酸味のバランスが極めて厳密である必要があるため、じゅんさい用のそばつゆ開発に苦戦した事。

詳しく解説すると、コストの問題というのはコスパの問題といった方が良いのかもしれません。
なぜなら、ホンマもんのじゅんさいがどれだけ高いのかは実はあまり知られていない。
にもかかわらず、高い値段の蕎麦になってしまうから需要がないのではないか?との心配がありましたが、とてつもなく美味しいものが出来上がってしまったから、高くても出そうという決心に至ったワケであります。

二つ目の問題は実は酸味とのバランスだけというよりは実はもっと根が深い問題。

この季節は先付けの小鉢にもじゅんさいの酢の物が付きますが、こちらのじゅんさい酢は八方地に近い料理用のお出汁にお酢味が付いたもので、ベース自体がサッパリしている。

つまりは言い方は悪いけど、どうにでも加工しやすいベースというワケです。
そこに酢や醤油やなんやかや足しても美味しくなってしまう。

煮物をやっても、お浸しにしても、ソーメンをたべても万能に使えて美味しいお出汁がベースなのです。

それに引き換え、そばつゆは、そば用に作っているので、そこに何かを足す前提がなされていないギリギリのバランスで作られています。
ましてや酸味と苦味はバランスを崩す二大要素と感じる。
人間は酸味と苦味にはとくに敏感に出来ているのです。

なぜなら、苦味は毒に結びつく味であり、酸味は腐敗に結びつく味だから。

その酸味を美味しく感じてもらい、効果的に使う場合、ベースが八方地のようなさらりとしたお出汁が基準となっているとバランスを取りやすくなるワケです。

そばつゆのベースとなる出汁は夏場は40分間、厚削りのかつを節を煮出してとる凝縮した出汁なので、非常に濃くて、そのまま飲むのは無理というくらいのものです。

つまりは、お酢の割合も増える。

全てが濃いツユでサラッと爽やかにじゅんさいを食べるわけには行かなくなる。

そういうワケで非常に難しいバランスのそばなのです。
まぁそこまで詰めて仕事をすればの話ですが。

冷たい出汁にじゅんさいとそばを入れてサラサラ食べてもそれなりに美味しいと思いますが、そこに感動は生まれないし、ウチの店では詰めない仕事はしない。
よそでも出来る事はしない。
詰めて詰めて、最後は普通に美味しいなぁと感じていただける大いなる普通のものを作りたいのです。

話が脱線しましたが、つまり、濃いところでバランスがとれたもの、凝縮したところでバランスがとれたものを人間がどう感じるかわかりますか?

そう、結局はキレイに感じるのです。

濃く感じたり、重く感じたりしたら、それはバランスがとれていないという事。

バランスがとりにくいから、キレイにつくるために薄くする人が多いですが、それは口あたりはよいし、いっけん洗練されているように感じるかもしれませんが、荘厳さがない。奥ゆかしさにかける。
例えばこれが日本酒やワインだった場合どうなるか?

そうです、信仰にルーツがあるにもかかわらず、人間だけのものを作ってしまう事になる。
口あたりが良いだけのものは飽きてしまうのです。

料理も同じ。

今回は先付けにサラッとしたじゅんさい。
選べるそばに、じゅんさいそばを選んでいただけば、それぞれの役割がキチンとなされていると、感じていただけるかと思います。