ジレンマ
日本において和食をすればするほど、ほとんどの人は、削ぎ落とされた仕事を目指して行くようになる。
あれもこれも食べて頂きたいのはヤマヤマだけど、お客様のお腹が苦しくても出し続けるのは良くないし、残してはいけないという気も遣わせてしまう事になる。
また、量がちょうどだとしても、少しでも何か手を加えなければならないという様な脅迫観念にかられてしまう事がある。
例えば、塩焼きが一番美味しいと自分ではわかっていながら、「それでは芸がないんじゃないか?」とか「いつも塩焼きでは変化がなくて申し訳ない」とか。
いや、実はもう作り手からすれば、塩焼きが一番難しくて緊張するんですが。
まぁ、そんな経緯で、わざわざ一番美味しいハズのものを勝手に理解されないと思いこんでメニューから外してしまう。
やればやるほど「シンプルで少量」が和食にはベストなんだと、料理人は皆、心の奥底ではよくよくわかってはいるけど、それではお金が頂きにくいし、経営が難しいとなる。
もちろん、「シンプル、少量」が和食本来の究極の突き詰めた姿だし、究極なんだから高額は当然なんだけども、やっぱりそれをやるにはびびってしまう。理解されないだろうと思ってしまう。
それなら逆に、高額でなくても、ある程度の価格で何回転もさせて利益を取るしかないとなるけど、それもまた、雰囲気を重視する観点から言えば究極ではなくなるし、追われるからどうしても仕事が荒くなる。
このジレンマを解決出来ている店はなかなかなくて、みんなどこか諦めるなり、そんなものだと無理矢理蓋をして仕事をしているんじゃないかな。
そんな深い事を考えずに適当な仕事をしている人は関係ないとして。
これをやはり、何とかすべく日々考えていく事が、もっと洗練される事であり、と同時に本来のあるべき姿に戻る事でもある。
普通は尊い。