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2012.02.01

包丁

包丁

第22回は、とても身近な「包丁」のお話です。

「包丁は刃物ではありません。食生活を支える大切な道具です。」

正しい包丁の研ぎ方を教わる為にお越しいただきました「食彩道具 竹上」包丁コーディネーター・包丁調整士の廣瀬さんのお言葉です。
私たちは、この一言にとても惹き込まれました。

最近、「食育」という言葉をよく聞きます。
それは今の子供たちに必要とされているようですが、実際は子供を育てる父母世代にこそ必要なんじゃないかとおっしゃっておられました。
スーパーに行けば、すでにちょうどよい大きさに切られているお野菜や、お皿に盛り付けるだけで完成するお総菜が豊富に出回っています。家庭でお母さんが毎日毎日包丁を握って調理している風景が一昔前に比べると随分減ってしまいました。
いま、包丁を使った凶悪事件が増えていることについて、包丁がそのようなただの刃物になってしまう背景にはそのことも関係があるのではないでしょうか。

料理人ではなく、包丁コーディネーターからの視点で「食育」のお話をされている廣瀬さんは、幼稚園で親御さんに包丁の研ぎ方を教えるそうです。
「道具」として丁寧に大切に包丁を扱う親の姿を、子供がそばで遊びながらなんとなく見ているだけで、こころのほんの片隅にでもそれが残ってくれたら、という思いは、きっと子供たちにそれが「大切な道具」であるということが自然に身につくことでしょう。
また、包丁の手入れについて「守(も)り」とおっしゃっています。「子守り」と同じ感覚なのだそうです。子供のことを「管理する」とは言わないように、包丁も「管理」ではなく「守り」。そこには、「管理する」というどこか自分の都合が含まれていることが全くなく、完全に相手に心を寄せて相手と同じ立場で見守るという気持ちが込められているそうです。

包丁の切れ味、使い心地、バランスなどをしっかり納得されるためにご自身で積極的に料理を作られているので、○隆兵そばの包丁を一目見てどんな包丁かお分かりになりました。
「短時間で、しかも楽に研げて、長期間その切れ味が持つ」、和包丁の本式の研ぎ方を聞き、主人も今までの研ぎ方を見直していました。

砥石を使うという点では料理人も大工さんも同じですが、「道具調べ」といわれるようにその人の道具の状態を見れば仕事ぶりが分かるという大工さんは、鉋などを研ぐ砥石は専用のケースに入れるなど、道具としてとても大事に扱っているそうです。一方、料理人には、足元の流しの下などに無造作に置くなど、その扱いにそこまで気を使う人が少ないということでした。その日以来、砥石は棚の上に片付けています。

その砥石ですが、実は京都の愛宕山や嵐山で採れる天然の仕上げ砥石の質はダントツで世界一だそうです。そんな身近に世界一があることに驚きました。ただ、今では宮大工さん以外は、家を建てる木材などはすでに製材されたものを組み立てるだけということもあるらしく、砥石の需要が減って採石職人もいなくなり、閉山している山が多いそうです。

屋号「食彩道具」から、包丁が「食に彩りを添える道具」のうちのひとつだということがわかります。
日本独自の、見た目にも美しく切り分けるという和包丁の料理文化に、包丁コーディネーターという新しい角度で改めて日本の文化の素晴らしさを見出された廣瀬さん。その道で一生懸命に純粋な気持ちで努力をしている方達のお言葉には、職業は違えども本当に通じるものがあるといつも思います。
この度も、包丁の研ぎ方だけではなく、もっと芯の大切なことまで教えていただきました。