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2013.12.01

苔香居(たいこうきょ)前編

苔香居

第42回は、桂探訪第4章「苔香居(たいこうきょ)」前編です。

京都西山の麓に、文化庁国登録有形文化財・京都市特別景観建造物指定の「苔香居」という名の山口家住宅があります。400年前から続いており、現在20代目の御当主が守っていらっしゃいます。
苔香居は年に2回、春と秋にきものの虫干しを兼ねて一般公開されます(要申込)。この度、秋の虫干しの会の申込みをしましたが、会に先駆けて、いつもお世話になっている山口さんに苔香居のなかを案内していただけることになりました。

到着すると大きな茅葺屋根の長屋門。江戸時代の建築はその姿かたちがとても立派で風格があり美しく、見応えがあります。
まず母屋棟に案内してくださいました。こちらの土間には、今でも現役のおくどさん(かまど)が並んでいます。このおくどさんで炊くご飯がとても美味しく、初めていただいたときに感激したことを覚えています。中村軒でも、いまでもおくどさんであんこを炊いているのは、やっぱりガス釜とは全然仕上がりが違うからだと聞いたことがあります。
続いて、明治の終わりごろの建築で昭和24年度に亀岡から移築されたという座敷棟。こちらは、唐長さんの唐紙の襖に、欄干の細かな細工、天井には立派な屋久杉が使われ、四方柾目の床柱(四面すべてが柾目の柱で、そうする為にはとても大きな原木が必要になるため、最高級の柱です)など、隅々まで見入ってしまいました。安土桃山時代の槍や薙刀が飾られているところなども、違和感なく自然にそこにある様子に、受け継がれてきた想いの奥深さを感じました。
そして「これこそ文化遺産だよ。」と教えてくださったのが、富士の釘隠しです。釘隠しとは、柱や釣り束(鴨居や天井を釣り支えている短い柱)と長押(柱や釣り束を連結する横材)が交差する部分に打ちとめた大きい釘の頭を隠すための化粧金具のことです。その際に、釘の頭が表面に見えないようにする装飾品です。
座敷棟に20ほどある釘隠しは泥七宝焼の富士山で、かかる雲の形にひとつとして同じものはないということです。富士登山ができなくても、桂探訪で本物の文化遺産に触れられました。
その後、庭も四畳半の「泰庵」というお茶室ものぞかせていただきました。
こういった日本の建物がだんだん珍しくなってしまうなかで郷愁にかられるような思いと、それでも脈々と伝承されてきた不変の形に敬意を込めて、山口家の門を出ました。
虫干しの会の様子を、「苔香居」後編としてご紹介したいと思います。