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2014.09.01

日本手績み麻布暖簾

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第50回は、「日本手績み麻布暖簾」の紹介です。

先の米沢旅行の折に注文していた暖簾が出来上がって店内にかけておりますので、ご紹介させていただきます。

店に小包が届き、ドキドキしながら開けると想像以上の素晴らしい暖簾が入っていました。それは、本当に稀少でとても良いものなので資料級の織物だという事でした。

古代から「麻」は日本人に馴染が深く、大麻草は縄文時代から日常的に日本人と深く関わってきた神聖な植物でした。日本人は、大昔から草を摂取して命を継承してきた民族で、また、その草から繊維をいただき身にまとって命をつないできた民族です。
現在は、時代の流れによる様々な事情で日本古来の麻糸を産業レベルで手績みできる人は10名にも満たないそうです。
て手う績みとは、草の繊維を細かく裂いて紡ぎ、撚り合わせて糸を生み出すことです。
この暖簾は、経糸にも緯糸にも、日本で種をまき日本で育てられてきた日本古来の大麻草を手績みした糸を使い、ひとの手で機織り機で織られたものです。
まさに途絶えようとしている日本の伝統技術と伝統文化を集約したものです。
いま「麻」と呼ばれているものの多くは外国産の輸入品で、繊維も強いため機械で織ることもできるほどのものです。
対して日本古来の大麻草は、繊維が繊細で機械では織ることができず、手作業でしか作ることができないため、工業化に適さないということで時代の流れにより衰退の一途を辿ってしまったというわけです。
大麻草について調べてみると、日本の風土や気候で育った日本古来の大麻草は毒性が弱いとありました。
また、大陸からあたたかい木綿が伝わったことも日本古来の大麻草の織物からひとが離れていったひとつの原因でしょう。
しかし、やはり機械には出せない、手績みならではの、機織り機で人がいちから繊維の柔軟性を生かして織られてあるため、柔らかな雰囲気がこの暖簾にはあふれ出ているように思います。
大麻草は、春に種をまき、夏に刈り取り、冬にかけて糸績みされます。ここまでで丸一年かかります。ここから織りあげて染めるという作業が入るので、暖簾が出来上がるまで、全体で最低でも1年半か2年はかかるということです。
〇隆兵そばの暖簾は日本の蓼藍を用いた正藍染で、山水という図案に染めていただきました。
藍の濃淡は、その濃淡の数だけ染め分けしているので、大変な手間と時間を要していることが分かります。まず薄い色を染めて、次に濃い色を染めるけれども、先に染めた薄い色が濃く染まってしまわないように糊ぶせをします。
この作業を濃淡の数だけ繰り返しているということです。
植物染めによる織物の中でも藍染と称するものは数多く市場に出回っていますが、インド藍、人造藍、硫化染料を用いて容易に作られた製品が多く市販されています。
それらのものはもちろん純然たる日本の伝統的な正藍染ではありません。
正藍染は原料となる日本の蓼藍が少なく染法に手数を要し、失敗も多く工賃は割高になり、最も肝心なことは長い経験と技術を要するということです。
米沢の「出羽の織座・米澤民藝館」の正藍染であるという証明書にそのように書かれてありました。
「本物には本当の良さがあります」と。
日本の気候風土に逆らうことなく、ありのままを受け入れて、その中で祈りを持って命を繋いできてくださったご先祖様方の想いを現代に繋いで、手績みし染めてくださったこの暖簾は、おそらく手に入れたくても手に入れられないものでもあるかと思いますので、いただいたこのご縁にとても感謝しております。
また、店にかけることによって多くのお客様に日本の伝統である本物の織物を見ていただけることを、民藝館の方も喜んでおられました。
店の玄関を入って真正面にかけてございますので、どうぞお越しになられましたら是非ご覧になってください。
命が吹きこまれているような暖簾の力によって店の空気もまたあらためられ、お蕎麦と料理がよりおいしく感じられること間違いなしです!