薬膳うなぎ鍋コース
第62回は、「薬膳うなぎ鍋コース」のお話です。
主人が考案した、よそではいただけない新しい鍋料理。
その名も「薬膳うなぎ鍋」です!
各国料理では赤唐辛子やタバスコなどをふんだんに使った「ピリ辛」「激辛」料理がたくさんございますが、日本料理には、もともと辛さの強すぎる料理はありません。そのためお断りが必要ですが、この鍋は、日本の料理でありながら刺激の強い味に仕上がっております。
「ない」というところから始まった初めての味なので、少しご紹介したいと思います。
このコースは、はじめにお野菜のもん少しと、川魚のお造り。お酒もさらりと愉しんでいただいたところで、本題のうなぎ鍋です。
鍋にはうなぎの白焼き一匹分お入れしますが、栄養がたっぷり浸みこんだ雑炊の際にまた足しますので、おひとり様につきうなぎを一匹半近く召し上がっていただくことになります。
うなぎが滋養強壮に良いことは言うまでもありませんが、それだけではなく、低カロリーでビタミンが豊富、コラーゲンも含まれており、美容やアンチエイジング効果も期待できるといいます。
健康的で男性にとっても女性にとっても嬉しいですね。
鍋は、もちろん昆布と鰹節でとった自慢のお出汁に、「薬膳」たる所以である隆兵そば特製調味料を足します。
ところで、京都の人は山椒が好きです。主人も、なんにでも山椒をかけます。というのは大袈裟ですが、親子丼にかける山椒の量の多さに、よそから嫁いできてすぐの頃、とても驚いたことを覚えています。でも、ちりめん山椒に代表されるように山椒を使ったご飯のおともたちも山椒の香りも、知らず知らずのうちに私もだんだんとクセになっていきました。
秘密の?特製調味料のひとつは、そんな山椒がたっぷり。
山椒による後を引く爽やかな辛さと香りがこの鍋の特徴です。
もうひとつの調味料は、青唐辛子です。青唐辛子は、鴨そばの名薬味「柚子こしょう」の材料でもあります。隆兵そばの自家製柚子こしょうは、青柚子に青唐辛子と塩のみで作ってねかせたものですが、青唐辛子も、ただ辛いだけではなく、「薬膳」にふさわしい様々な効能があります。
まず、鰻にはないビタミンCが豊富に含まれているので、鰻と一緒にいただくことで吸収率が良くなり相乗効果が期待できます。他にも、ビタミンEや、辛味成分のカプサイシンが血行を良くし、冷え性の改善に効果があるとされています。カプサイシンは胃を保護する胃の粘液を分泌する働きがあるので、意外ですが胃炎予防にも良いそうです。
木の芽、というと春の香りを思い出す山椒の若い芽のことですが、「木の芽」といえば「山椒の若芽」となるほど、山椒は古くから日本人がいただいてきたハーブです。
山椒の持つあの爽やかな香りには、免疫細胞を活性化し、抗酸化作用を高める効果があります。山椒は小粒でもピリリと辛いと言いますが、じつは山椒の辛さの成分は唐辛子の200分の1ほどで、直接的に「辛い」のではなく、舌が痺れているので、その痺れによって、脳の働きが活発化するそうです。
そして、主人が隠れておすすめする一番のポイントですが、山椒と一緒にいただくと舌の感覚が鋭敏になり、日本酒の味わいがよく分かるようになります。
より、美味しさを感じられますので、日本酒をいただくにも最適な鍋料理に仕上がっております。
鍋の後は雑炊ですが、シメはやっぱりおそばです!
冷たいおそばを、このコースの為に作った青唐山椒のつゆで召し上がっていただきます。
滋養強壮に、健康のために、美容に、アンチエイジングに…、季節の変わり目に少し身体がだるいな…という時は、是非、薬膳効果をお試しになってみてください。
滋味あふれる〇隆兵そばの薬膳うなぎ鍋。辛さが苦手な方は、おっしゃっていただければ辛味を抑えて調理させていただきます。