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2013.02.01

草木染めのお話(後編)

草木染めのお話

草木染めは、その名の通り、植物の枝や葉っぱや茎、根を煮出した液で糸を染めることをいいます。小学校の理科の授業で、玉ねぎの皮を使って染色することを習った記憶があります。
染めた色を定着させたり、よりきれいに発色させるために、糸の繊維と植物の色素を結びつける役割のある金属系の物質を使って「媒染」という色止めを行います。黒豆を炊くときに古釘を入れるときれいな黒色になることと似ています。
植物によっては、この「媒染」でどういうものを使うかによって色が変わってきます。小枝さんがよもぎを使って染めた糸で織られたという織物を見せてくだいました。この織物はすべてよもぎからいただいた色なのだそうです(今回の散歩道の写真です)。
みょうばんで黄色、銅で金茶のような黄土色、鉄でグレー、鉄と灰汁でこげ茶、灰汁で緑と、よもぎだけでこんなに色が表れるとは、そしてよもぎだけの色でこんな風に織られることに、とても感嘆いたしました。目で見えている色が染まると思っていましたが、そうではなかったのです。
小枝さんが夢中になられたという桜も、花の咲いているきれいな頃の枝で美しい色に染まるのかと思えば、まだまだ咲かないかたいつぼみがつく前、咲き誇る春に向けてじっと内に蓄えている頃の枝から、鮮烈な淡い桜色が出るそうです。
小枝さん曰はく「目に見えている色は、目で見て楽しませていただいているから、色としてはもういただけない」のだそうです。
「この色に染めてやろう」と自分の意思、欲望が入ると逃げられる、蜃気楼を追いかけているようだとおっしゃっておられました。
「色をいただいている」という小枝さん。主人のおそばに対する思いと共通するものを感じました。
毎日おそばを打っていても、こういう味にしようと「狙う」と、良い味には仕上がらないそうです。自分が美味しいと思えるおそばになるときは、必ず自分の意思が届かないところからくるものによってそうなると言っています。
小枝さんの織物を美しいと思うのは、自然を相手とし、意のままにならないものに寄り添い、只いただこうという心を持っていらっしゃるからなのかなあと思いました。
禅で「只管打坐(しかんたざ)」という言葉があります。ただひたすらに座禅する。主人は、そば打ちをしているときはおそばになりきるという思いから厨房に「只管打打(ただ)」ともじって書いたものを貼っていますが、小枝さんの草木染めは、「只管打染」のように感じました。

草木染め