隆兵そば
2020年7月27日

流行り廃り

ファッション同様食べ物にも流行り廃りがあるように感じる今日この頃。
食べ物側から見ればたまったもんじゃあないなんて思ってるような気もしますが。

昔タピオカが流行って、すぐに聞かなくなったと思ったらまた最近聞き始めて、ウチの近所にも専門店なんか出来たりしてます^_^

蕎麦にもそんな傾向があり、僕の修行中なんかは「自家製粉、手打ち、十割そば」というフレーズが流行ってて、そうでないものは悪ぐらいの空気がありました。
師匠も当時は関西自家製粉の御三家と言われるような方でしたから、製粉にしても一から教えて頂きました。

ただ、師匠が偉かったのは「隆兵くん、自家製粉なんてせやんでもええねんで。一回製粉会社行っといで」
と。

自家製粉でここまで来られた人がなかなか言える言葉じゃない。普通はそこに固執してこうじゃないとダメ!みたいになるのに。
さっそく製粉会社の見学に行って、よくわかった。
「餅は餅屋」
製粉会社は設備も技術も自家製粉とはまるで違う。
師匠は「自家製粉は自己満足の為や。でも粉のプロからしたらオモチャみたいなもんやで」
とおっしゃってた事がよくわかった。
そして、製粉会社なのに床に粉が落ちていない。

そんな経緯から僕は料理と蕎麦のコース料理と初めから決めていたので、製粉はプロにお任せする事に決めた。
もちろん、製粉会社の粉をそのまま使ったりはしない。
独自のブレンドをする。
そこで唯一無二の粉ができるから。

ブレンドする時に大切なことは、自分の理想とする味を目指す時、理想ではない種類の粉も ほんのわずかだけど必要だという事。
不安分子は取り除きたくなるのが人の常だが、それでは実はうまくいかない。

これは世の中の真理さえ現すように感じるんです。で、真理には流行り廃りがない。

これからの世界はそこに於いて仕事をしていく必要がある。

2020年3月12日

主役、脇役

活かす力。
俳句をやっていると、一番大切なことは やはり季語を活かすということに尽きるのではないだろうかと思います。
主役を主役たらしめる。
皆んなが主役なんて事を言いがちな世の中ですが、それでは何にもないくだらない世の中なのです。
全てのものには 必ず主役と脇役があります。
ただ、一つ大切な事は、主役が偉くて脇役が劣るなんて事は全くないということ。
脇役は主役を立てる為に全力を尽くす。
主役は立ててもらった期待に応える仕事をする。
つまりは、脇役は主役であり、主役は脇役であります。主役即脇役、脇役即主役であります。
これを無理矢理に揃えようとすることが いかに愚かなことで、自然の摂理に反することであるかを知らなければなりません。
いくら良いお造りでも、醤油やワサビがダメではその価値を下げてしまう。
でも反対に、普通のお造りでも醤油やワサビが良ければそれなりに美味しく感じるのが不思議です。
そばも同じで、つゆやワサビが安物ではダメですが、本気のツユやワサビで食べる安い麺は意外にも良かったりします。
主役を活かすのは脇役次第ということなのでしょう。
俳句なら季語を活かす。
茶懐石なら茶を飲む為の料理。
蕎麦懐石なら蕎麦を食べる為の料理。
割烹ならまずは庖丁、そして煮炊き。
いま、それらの主役が守られているかと言えば、甚だ疑問に感じるのです。
ちなみに隆兵そばは一度たりともそば懐石とうたった事はなく、そば懐石を名乗るつもりは毛頭ありません。

「随処作主立処皆真」

自分の置かれた立場に置いて全力を尽くす。
それこそが主役脇役を超えた主人公、本来の面目なのです。
皆んなが主役ではなく、主役脇役を超える。
主役にとらわれない。脇役にもとらわれない。
そこを超える。
それしか道はないのです。
そして、また、南北東西に活路は通ず、です。
そこまで行こう。また、それも超えよう。
程度の低い所をウロウロしている時間は無いのですよ。

そう思えば脇役なくして主役なし、であります。もちろん主役なくして脇役なしであります。

若い人たちよ、君たちは偉大なる脇役として主役を盛り上げる人生を歩むのか、はたまた、偉大なる脇役に盛り上げてもらいながら主役として生きていく人生を歩むのか、どっちだ!?

僕の応えはいつも同じ。

両方!

2019年12月16日

料理と酒

料理は祈りである。
これは私が日々仕事をする上で感じたことをあえて言葉にすると、という話し。もちろん、人間の創作活動を100%的確な言葉に置き換えることなど出来はしないのでしょうが、あえて言うなれば。です。
祈りというからには、その対象があるわけで、料理人としての私の場合にはその対象は食材の命であり、生産者であります。

では、酒はどうか? 酒の方がルーツとしては祈りに近いはずです。
が、僕の感覚としては、もう少し向こう側。

恵。

これこそ、酒にふさわしい言葉なんじゃないかな。と。
アメージンググレース。
クリスマスまでもう少し。
大いなる恵に感謝する寒い夜。

2019年11月5日

そばと酒

そばと酒は合わない。 と言うと猛反発をくらいそうですが、正しくは、「そばを食べながら酒を飲むのは不粋」という事。
ますます 怒られそうですが、もちろんそば屋で飲む酒は格別です。しかし それは、そば屋で飲む酒であり、そばを食べながら飲む酒ではないという事。
そばは伸びないうちにささっと食べるのがマナーであり、粋であります。
そばは酒を飲みながら食べるものではないのです。
その為に そば屋には酒のアテがあり、そばが来るまでの間に 「そのアテで」飲むのです。ですからそば屋では「酒」の事を「そば前」と言うのですが、最近の雑誌などが「そば屋の酒のアテ」をそば前と言いだしており、本来の意味が曖昧になって来ております。
本来はそば屋の酒、百歩譲って、そば屋で飲むという行為がそば前という事であり、おつまみ自体はそば前ではないのです!
さて、隆兵そばでは、そのアテが川魚料理なわけです。つまり、酒のセレクトは川魚料理に合う酒、ワインも川魚料理に合うワインを選ぶ必要があり、そばに合う酒やワインを選ぶのではないという事です。
ただ、「そのそば屋」に合う酒やワインはオッケーという事になりますね。そばそのものに焦点を当てるのではなく、そのそば屋に焦点を当てる。そして、そのそば屋がどんな料理を出すのかにより、その酒やワインは異なってきます。
細かいことを言いますが、味覚とはそういう綿密な考察抜きには語れない繊細なものだという事です。

2019年5月18日

観音堂

毎月18日は曜日に関わらず定休日です。それはお世話になっている福井の小浜にあるお寺へお参りする為。この日は観音堂でお話しがあり、子供達と一緒に出掛けるのです。

今日は上皇后様が昔詠まれた御歌のお話しでした。

知らずしてわれも撃ちしや春闌くる バーミヤンの野にみ仏在さず

「われも撃ちしや」というところに仏教の精神があると老師様がおっしゃっていたということでした。
石仏が破壊された事や、その不寛容を嘆くだけではなく、もしかしたら、自分もそのようなことがあるのでは?と深く自省される。
石仏が破壊された時、そのように思える人間がどれだけいただろうか。
人が何をやった、言った、ではなく、常に自分がやっている事、言っている事を深く自省しましょうということでした。僕が全く出来ていない事です。その自覚があるのが唯一の救いかもしれませんが。

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